むかしばなし

 

 むかしむかしあるところに、かみさまがいました。
 いつからいたのか、それはかみさまたち自身にもわかりませんでした。ただ気がついた時には、彼らはそこに、確かに存在していました。

 かみさまたちは気まぐれに、新しい世界や、そこに住む生き物たちを作りました。

 そのうちに、かみさまたちは、誰が一番美しい世界や強い生き物を作ることができるかを競い始めました。
かみさまたちは、もう数えきれないほどの昼と夜を繰り返し、とても退屈していたのです。

 あるかみさまは言いました。
「私は、美しい翼を持つ生き物達が住む世界を作ろう」

 またあるかみさまは言いました。
「それでは私は、気高く力強い四肢を持つ生き物達が住む世界を作ろう」

 さらに別のかみさまは言いました。
「ならば私は、ゆめやまぼろしで出来た世界を作ろう」

 かみさま達は思い思いの世界を夢想し、作り上げ、育てました。

 しかし、かみさまの力を持ってしても、世界というのはとても不安定な存在で、泡となって消えてしまうものも、たくさんありました。

 そんななか、いくつかの世界が順調に育ちました。

 そのうちの一つの世界には、高い知性と強大な魔力を持つもの達が生まれました。彼らはやがて高度な文明を持ち、かみさま達にも近しい程の力を持つようになりました。

 その世界を作り上げたかみさまは、興味深く見守っていましたが、やがて大きすぎる力ゆえに、彼らは滅びの道を歩んで行きました。
 強大な魔力の度重なる行使により、世界は徐々に綻びはじめたのです。

 かみさまは悩みました。このまま放っておけば、いずれこの世界は滅んでしまうだろう。なんとかこの世界を生かす方法はないものだろうか。
 悩んだ末に、かみさまは、他に作り上げた世界と合わせることにしました。別の世界と混ざり合うことで、滅びかけていた世界はなんとか形を保つことができましたが、結局、元々住んでいた強大な魔力をもつもの達は、大半が失われてしまいました。
 かみさまは、なんとか救うことができたこの世界が、再び滅びの道を歩んでしまうことを恐れ、世界が自立的に保たれる仕組みを作ろうとしました。世界を大きく2つに分け、天秤のように両者で釣り合いを保つようにしたのです。
 それぞれは同じ世界でありながらも、異なる性質を持つようになりました。

 そして、多くの月日が流れ、強大な魔力を持つもの達が生きた時代は、遥か昔のお話となりました。