願わくば

 

ただ無性に誰かのぬくもりが欲しかった。

(……他人のぬくもりを奪うことしかしてこなかった俺が)

求めるのはひどく滑稽だった。

あるいは誰かを強く強く抱きしめたいのかもしれない。
この腕で、この手のひらで。
己のぬくもりを、鼓動を、分かち合いたいのかもしれない。

(馬鹿みたいだ……)

いまさら一人でいることに怯えているのか。

それとも心のどこかに僅かに残った寂寥感が悪さをしているのか。

(俺はいつも無いもの強請りばかりだ)

手に入らないことはわかっているのに、求めてしまう。
いつかは水面に漂う月を掬うことができるとでも信じているのか。

今はただ、愚かな自分を笑うことしか、できない。