『箱庭』
真っ白な世界に、好きな色を並べる。
空の青、夕日の赤、木々の緑…
全ては望むままに。
果てなき荒野も
極寒の凍土も
灼熱の砂漠も
思い描いた地図を作り上げる。
そしてそこに息づくものたちを。
人も、人でないものも。
彼らはまた、それぞれの歴史を刻み始め、やがて無数の世界が生まれる――
大事なものを、ありったけ詰め込んで。
そっと、心の奥底にしまい込んだ宝物。
好きなときに蓋を開け、また鍵を閉める。
小さいけれど大きな世界。
この世界に不可能は存在しない。
全ては思うままに。
時を経て、宝箱の存在を忘れてしまうまで。
彼方に存在し続ける
永遠の楽園。
――ここはどこ?
――貴方が望む世界。でも――
この世界に貴方自身は存在しない。
「貴方の心の中に、箱庭はありますか?」