白の世界

 

しんと静まり返った世界。

世界は音を無くし、ただただ時を刻んでゆく。

降り続く雪は、少しずつ、しかし確実に、全てを白く染め上げていく。

さくりさくりと雪を踏みしめ進む。
見慣れたはずの、見知らぬ光景。

吐く息は白いのか白くないのか、もはやわからない。

見上げれば明かりに照らされた部分だけがまあるく切り取ったように仄かに輝く。

さらに空を仰げば、まるで自分を中心に降り注いでいるかのようだった。

寒さも忘れ、独り佇む。

いつまでもこの空間を味わっていたかったから。